建設業の許可を初めて取る事業者の方や建設業許可についてよく知らない方に、短時間で建設業許可制度の概要をつかんでもらえるように要点をまとめました。
目次
許可を取ると何ができるのか
建設業の許可を取得することで、500万円以上の建設工事を請け負うことができるようになります。逆に言えば許可を持っていない業者は原則として500万円以上の工事を請け負うことができません。これは建設業法という法律の中で定められています。
法律の定めとは別に、建設業の許可を持っていることで元請業者や顧客など、対外的な信用が増すという事実上のメリットもあります。
許可は「業種別」に取る
建設業の許可と一口に言っても、「建設業の許可」という許可が一つある、という話ではありません。建設業の工事には様々な種類があります。例えば大工工事、左官工事、くい打ち工事、電気工事、配管工事・・・等々。
各工事ではそれぞれ専門的な技術が求められるため、許可についてもその内容に応じて29の業種に分かれています。したがって建設業の許可を取得する際には「どの業種の許可を取得するか?」という点をまずは考えることになります。
ちなみに1つの業種だけしか取ってはいけないという決まりはないので、条件を満たせば複数の業種の許可を取得することもできます。
下請・元請で許可区分が異なる
建設業の許可には「一般」許可と「特定」許可の2種類の区分があります。これはどのような区分か、簡単に言うと下請け業者か元請業者か、という違いによる区分です。
なぜこのような区分が設けられているかというと、元請業者の場合、資金繰りが厳しくなると下請け業者にも連鎖的に影響を及ぼしてしまい、広範囲の業者に大きな打撃を与えかねません。そうした危険から下請け業者を保護するため、元請業者については「特定建設業」の許可という区分を設け、財務状態や技術力など許可に必要な条件(以下「要件」)を一般建設業よりも厳しめに設定するという制度が敷かれています。
許可を下す役所は「国」または「都道府県」
「許可」なので誰かが許可を下す立場にあるわけですが、建設業の許可を下す者すなわち許可主体についてはこちらも2種類あり、「国(国土交通大臣)」か「都道府県(知事)」のどちらかになります。
この違いは建設業法における「営業所」の配置形態によります。営業所が2つ以上の都道府県に存在する場合には国の許可、1つの都道府県の中だけに存在する場合にはその都道府県の許可を取得することになります。
つまり営業所が1つしかなければ当然に都道府県の許可となるので、この件に関して考える必要が出てくるのは営業所を2か所以上有している事業者ということになります。
許可を取ったらそれでおしまい?⇒いいえ違います
有効期間は5年間
建設業の許可には5年間の有効期間があり、5年後も引き続き許可が必要であれば更新手続きを行う必要があります。つまり許可を取得すると5年ごとに更新手続きが必要になります。
毎年度の決算報告が必要
許可業者には税務申告とは別に、建設業法で定められた形式の財務諸表などをそろえた決算報告を毎年度行わなければなりません。これを怠っていると5年後の更新申請の際、更新が認められません。
各種変更届けが都度必要
商号や役員、資本金額など、許可申請の際に届け出た事項に変更があった時にはその都度、変更届けを提出する必要があります。
許可取得に必要な条件
必要な条件なので「要件」と呼ばれます。建設業の許可を取得するためにはヒト・モノ・カネの要件をそろえる必要があります。
経営層の経験者
個人事業主や会社の取締役など、建設業の経営全般に一定の期間携わった経験を持つ人を用意する必要があります。専門用語で「経営業務の管理責任者」(略して経管)と呼ばれます。
専任の技術者
建設業についての一定の技術を持ち、営業所ごとに専任で勤務する技術者を用意する必要があります。専門用語で「専任技術者」(略して専技)と呼ばれます。
欠格事由に該当しないこと
犯罪による処罰歴や暴力団関係者等、該当する場合には許可が下りないとされている条件が定められています。これらは「欠格要件」と呼ばれ、許可を受けようとする会社の役員クラスの人がこれらに該当しない事が必要です。
誠実性
顧客と締結した請負契約の内容を遵守する、建設業法違反となる行為をしない、など建設業者としての誠実性が必要となります。
営業所
建設工事の請負契約を締結するにふさわしい設備が整った営業所を用意する必要があります。
財務状態
建設工事には多額のお金を要します。また請負契約という契約形態の性質上、先に材料費や外注費などの費用を支払い請負代金の回収は工事完了後となるため、資金繰りについての安全性も一定程度担保される必要があります。そこで建設業を安定的に営むために必要な財務的要件が定められています。
大まかですが建設業の許可を取得するためには以上のような要件を満たす必要があります。
許可申請の手続きはかなり大変
建設業の許可を取ろうと考えた時、まずは上述した許可制度の仕組みを理解し、その上で許可に必要な条件を満たすかについて細かく検討していく必要があります。
さらに許可取得の見込みが立ったら役所に申請するための書類作成に入ることになります。申請手続きについては各都道府県から手引き書も出ていますが、約100ページに及ぶ手引書を読み込み、申請に必要な膨大な書類を準備するには、初見だと相当の時間と労力が必要となることでしょう。
役所の手続き書類で時間を取られたくない、本業に集中したいというのが事業者の方の本音ではないでしょうか。ここに市民と行政との橋渡し役である行政書士を利用する意義が出てきます。
多少の費用を掛けてでも膨大な手間と労力を省くため、建設業の許可申請については書類手続きの専門家である行政書士に依頼することをお勧めします。