※当記事は、2017年5月に成立し、2020年4月から施行された改正民法(債権法)に関する解説記事です。
改正民法第537条
1 契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。
2 前項の契約は、その成立の時に第三者が現に存しない場合又は第三者が特定していない場合であっても、そのためにその効力を妨げられない。
3 第1項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。
改正前民法
1 契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。
2 前項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。
ポイント
- ・第三者のためにする契約において、契約時に当該第三者が存在しなかったり、特定していなかったとしても、契約は有効に成立する。
- ・従来から存在してきた判例法理を明文化した。
従来から存在する判例法理の明文化
改正537条では、改正前537条では明文化されていなかった従来の判例法理が、明示的に法文として規定されました。
具体的には、改正537条の2項で、第三者のためにする契約において、契約締結時点で当該第三者がまだ存在していなかったり、当該第三者を特定していなかったとしても、契約は有効に成立するということが明文化されました。
まだ存在していなかったり特定していない第三者として想定される例としては、胎児や設立前の法人等です。
このような、受益者となる第三者が将来現れることを予期してする契約についても、過去の判例で法的に有効であると判示されてきましたが、こうした判例法理を明確に規定する趣旨で改正537条の2項が追加されました。