民法改正(債権法)のポイント

民法(債権法)改正ポイント解説【548条の2】定型約款の合意 第1項

※当記事は、2017年5月に成立し、2020年4月から施行された改正民法(債権法)に関する解説記事です。

改正民法第548条の2

1 定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。以下同じ。)を行うことの合意(次条〔定型約款の内容の表示〕において「定型取引合意」という。)をした者は、次に掲げる場合には、定型約款(定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。以下同じ。)の個別の条項についても合意をしたものとみなす。
(1) 定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。
(2) 定型約款を準備した者(以下「定型約款準備者」という。)があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき。

改正前民法

新設(該当規定なし)

ポイント

  • ・改正前には存在しなかった、約款(「定型約款」)に関する規定が新設された。
  • ・本条では定型約款に関連する用語の定義が規定されている。
  • ・用語の定義に加え、本条では定型約款が契約内容としてみなされる要件について規定されている。

「約款」に関する規定の必要性

日常生活でいわゆる約款と呼ばれている契約条項に触れる機会は結構あると思います。例えばクレジットカードを申し込む時や、何らかのWebサービスに登録する時等、長々と条項が書いてあるものが提示されて、Webだと「同意する」にチェックを入れないと進めかったりする、あれのことです。

正直、登録や申込みする時に約款にしっかり目を通すことなんてないですよね。でも、旧来の民法にはこうした約款に関する規定が存在しませんでした。
そのため、中身もよく読まずに形だけ同意した約款を、果たして「契約」とみなしてよいのか?という点について、判例でも見解が分かれる等、曖昧な状態が長らく続いてきました。
そこで、今回の民法(債権法)改正において、今日世の中で広く使われている「約款」に関する規定を設ける必要が出てきた次第です。

条文の構成をわかりやすく分解

条文を詳しく見ていきたいと思いますが、カッコ書きが長いので、一読して何が言いたいのかよくわかりませんね。
まずはカッコを除いてみると全体の構成が掴みやすいので、やってみましょう。

改正民法第548条の2(カッコ等省略)

1 定型取引を行うことの合意をした者は、次に掲げる場合には、定型約款の個別の条項についても合意をしたものとみなす。
(1)…
(2)…

要するに、「定型取引」という取引を行うことについて合意した者は、(1)や(2)の場合を満たせば「定型約款」の各条項についても合意したとみなす、ということが述べられています。
そしてカッコ内で「定型取引」や「定型約款」という言葉の定義を説明している構成となっています。(要件と言葉の定義を一緒くたに詰め込んでおり、とてもわかりづらいと感じるのは私だけでしょうか・・・)

「定型取引」とは

「定型取引」とは、「①ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、②その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの」とあります。

例えば、宅配便の例で考えてみましょう。宅配便のサービスは、宅配業者(ある特定の者)が、不特定多数のお客さんに配達物を届ける取引です。そして、サービス料である送料は、全国一律であったり都道府県別に設定されていたりと、画一的な料金体系となっています(お客さん毎に料金交渉するのは非合理的すぎますよね)。こうした特徴を持つ取引を、改正民法(債権法)では「定型取引」と呼びます。

「定型約款」とは

「定型約款」とは、「「定型取引」において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体」とあります。

定型取引において、事業者が作成した契約条項群のことを指している程度に捉えておけばよいでしょう。世間一般的な「約款」という言葉で想起される、細かい字で長々と書かれている、ほとんど読まないあの約款がイメージできれば大体合っています。改正前の民法には規定が無かった「約款」について、ここで言葉の定義をしています。

定型約款なんて読まないけど、合意したことになるのか?

宅配便を送る時やクレジットカードを申し込む時、いちいち約款にしっかり目を通して内容に合意してから申し込みなんてしないですよね(する方がいたらごめんなさい)。

ここで問題となるのは、形の上だけで合意した定型約款の中身が、契約内容として成立するのか?という点です。契約の成立は双方の合意に基づくことが民法の大前提だからです。

過去の判例でも、定型約款の中身が契約内容となるかについては判示が分かれていたため、どのような要件を満たせば定型約款の中身についても契約内容として合意したとみなすか?という「みなし要件」についても新たに規定する必要性がありました。この要件が規定されているのが(1)と(2)です。

(1)定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき

(1)の規定により、契約内容は定型約款に書いてありますよと言われ、はいわかりましたと合意をすれば、約款の中身を読んでいなくても契約内容として合意したとみなされます。

(2)定型約款準備者があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき

(2)の規定により、契約内容は定型約款に書いてありますよと表示さえしていれば、約款の中身を読んでいなくても契約内容として合意したとみなされます。

合意したとみなされない場合

前述した(1)や(2)だけでは、定型取引事業者に一方的に有利な条項が盛り込まれていたり、定型約款の中身を事前にちゃんと確認したいと申し出た人に対し事業者側が定型約款の開示を拒否した場合等にも、定型約款の内容で合意したとみなされてしまう危険性があります。
そのような場合に備えて、一定の場合には合意したとみなされない規定が、このあとの条文に規定されています。(こちらについては別記事で解説予定です)

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