※当記事は、2017年5月に成立し、2020年4月から施行された改正民法(債権法)に関する解説記事です。
改正前638条を削除
1 建物その他の土地の工作物の請負人は、その工作物又は地盤の瑕疵について、引渡しの後5年間その担保の責任を負う。ただし、この期間は、石造、土造、レンガ造、コンクリート造、金属造その他これらに類する構造の工作物については、10年とする。
2 工作物が前項の瑕疵によって滅失し、又は損傷したときは、注文者は、その滅失又は損傷の時から1年以内に、第634条の規定による権利を行使しなければならない。
ポイント
- ・担保責任の期間に関する諸々の規定改正に伴い、土地工作物についての特則は削除された。
請負の担保責任の期間に関する新規定
今回の民法(債権法)改正では、請負契約における担保責任の期間について、消滅時効と絡めて以下のように改正されています。
請負の担保責任の期間に関する一般原則
「注文者がその不適合を知った時から」1年以内に請負人に通知する(637条)
消滅時効に関する規定
上記の通知を前提として、
「権利を行使することができることを知った時」(主観的起算点)から5年間、又は「権利を行使することができる時」(客観的起算点)から10年間ないし20年間で(追完や報酬減額請求等の)権利が消滅する。(166条、167条)
請負の担保責任の期間制限に関してこれらの規定に改正されたことを受け、土地工作物についての特則についてはその存在意義が乏しいとされ、削除されることになりました。
土地工作物についての特則は維持すべきとの批判も
ただ、建物を例に考えてみるとわかりますが、土地工作物についてはその瑕疵(改正後は「契約不適合」以下同)が身体や財産に及ぼす影響が大きく、後々になって瑕疵が見つかるというように瑕疵を発見すること自体も難しい場合があります。
638条はこうした土地工作物の瑕疵の重大性に鑑み担保責任の期間を特別に伸長する目的で定められたという経緯があり、その趣旨を酌み改正後も土地工作物については特則を維持して担保責任の期間を一般原則よりも伸長すべきであるという批判もあります。